日本語の魔法

今日は日本在住のロシア人の女性のYouTubeを紹介します。
日本人だと当たり前で気づかないことを語られています。
内容を要約します。
番組へのリンクは最後に貼りました。

他国にはない曖昧な日本語

　日本でMaxLuxというユニットで歌手をしているロシア人女性のアリシア・フォードさん。

　日本との出会いは日本映画でした。

　お母さんが黒沢映画の大ファンであったことが縁となりました。
日本映画との縁で大学生時代に黒沢映画とは違いますが、小津安二郎監督の「秋刀魚の味」という映画に出会いました。
　←全編観れます。

　小津監督の映画は亡くなった私の父もファンでした。
というか、笠智衆（りゅうちしゅう）さんのファンでした。

アリシアさんは、まだ日本語が今のように分からなかったのに、ただ静かな映像と穏やかな日本語を聞いているだけで幸せだったと言います。

　来日して日本語を学び、理解するようになって氣づいたことがあります。それは日本語には曖昧な言葉がたくさんあり、それを理解するには日本人の気質を理解しないと、その本当の意図は解らないということです。何故なら日本語は日本人の気質が作り出している文化だからです。日本文化を理解しないと日本語の真の意味は分からないと思いました。

　例えば、「それなりに」「そのうち」「いずれ」「一応」「とりあえず」などの曖昧な言葉はロシア語では訳せないと言います。そういう語彙を使う発想の気質がロシア人にはないからです。そういう言葉を使いこなすには、日本人の心が分からないと使えないのです。

　アリシアさんは動画の中で若い恋人同士の会話を、そんな日本人の曖昧な言葉で演技しています。

「今度いつ逢う？」
「そのうちにね」
「ご家族に合わせてくれない？」
「いずれね」
「俺のこと好きなの？」
「一応」

「一応って愛してないの？」
「とりあえず愛してる」

　アリシアさんは、この曖昧さがずっと嫌いでしたが、今では結構好きになったそうです。

　また日本語の特徴として、語尾を変えるだけで全然印象の違う言葉になっていることを発見しました。
　これは私たち日本人には当たり前ですが、英語やロシア語では出来ない技のようです。「日本語は難しい」を、語尾を変えて言うと、

「日本語は難しいね」

「日本語は難しいのね」

「日本語は難しいんだな」

「日本語は難しいですな」

「日本語は難しいですね」

「日本語は難しいなぁ」

「日本語は難しいよなぁ」

日本語の魔法

　アリシアさんは続けます。

「日本語の勉強（に必要なの）は言葉だけじゃないんです」「単語をいっぱい覚えればいいってものじゃないんです」「日本語はイコール日本の文化だから、同時に文化も勉強するようになりますね」「空気を読む、相手を立てる」「日本語を学ぶっていうことは日本の精神に触れるということです」「日本の精神にどっぷり浸かるということです」「日本語を話すには、相手の気持ちを考えなくちゃいけない」「相手を傷付けないようにしなくちゃいけない」と言います。

　そういうことを理解しないと日本語は絶対に喋れないと言います。これが日本語を勉強して一番分かったことです、と。そして私たちの心は言葉で出来ているんだということが、良く解かったそうです。

　現実には、日本人の心が日本語を作り上げていて、外国人の場合には日本語を使えるようになる過程で日本の心が形成されるということだと思います。だから、「私たちは言葉をコントロールしていると思っていますが、それは違います」「言葉も、同時に、私たちをコントロールしているんです」と、彼女は理解します。

言霊

「相手を尊重して相手を立てる」「そういう日本語だから、日本語を勉強している外国人はみんな性格が変わっちゃいます」「日本にいる外国人は私を含めて、みんな優しくなってる」「相手の気持ちを尊重できるようになっている」

「それが日本語という魔法です」

「日本語をまじめに理解すると、そういう性格になってしまうみたいです」「言霊ですね」「日本の精神が言葉に宿っているのだと思います」

　以前、私の知り合いだアメリカ人画家が、アメリカに帰るたびにカルチャーショックにかかると言っていたことを思い出しました。自分を主張しない、相手を思いやる心の違いに驚くそうです。

　外国人が数年日本に住んで日本の文化になじんでしまうと、その心地よさが解かってくるのだと思います。だから私たち日本人が海外に住んだ場合以上に外国人はカルチャーショックを受けるのではないでしょうか？

　真理を一番理解できる言葉、それは日本語なのです。