計画して募集した記憶力のセミナー、アクティブ・ブレイン・セミナー(ABS)ですが、力及ばず人がほとんど集まらず。
期限まで待っても開催できないと判断しました(吉野先生からは最低16人ら20人が理想と言われていた)。
電話が繋がらなかった方にはメールで既にお知らせしてありますが、折角ご応募いただいた数人の方にはまことに申し訳ございませんです。
お詫び申し上げます。ホームページはそのままに、またの機会までお待ち願います。m(__)m
毎月高い費用をかけて子供を塾に通わせるより有効とか、私大から公立大学を狙えるようになって実際合格したとか、いろいろと良きことも起きていると聞いていて、皆様にも有益と思ったのですが、頭を切り替えてまたの機会をご用意できればと思います。
記憶術体験セミナー受講希望者登録ページ
気を取り直して(^.^) お約束していた記憶力の連載の続きです。
やり方次第で伸びる人は伸びるということですね。
■ 10ヵ月の独学で「記憶力日本一」に
さてチャレンジすることにしたのはいいけれど、その大会がいつ、どこで、どんな種目で行われているかもわからない、ゼロからのスタートでした。
それでも、本やインターネットから調べた情報をもとに、大会本番までの10ヵ月間、独学で(技術はABSで覚えた=とびら)大会用の練習を続けました。
そうして2013年の2月3日、記憶力日本選手権当日を迎えたのです。
今思えば、どんなレベルの人たちがいて、自分がどのぐらいのレベルなのか全くわからない形で出場できたことが、良かったと思っています。つまり怖いもの知らずだったわけです。そのため周囲を意識することなしに集中して競技に臨むことができたのです。
そして表彰式での結果発表。蓋を開けてみたら、自分でも驚くことに過去最高得点での優勝でした。
この私が記憶力日本一になってしまったのです。
日本人初の記憶力グランドマスター
チャレンジすること自体が目的だったので、日本選手権の後のことは全く考えていませんでした。ところが大会終了後、記憶競技の常連の方たちから、実は記憶競技のメーンの舞台は国際大会だという話を聞きます。
マインドマップを発明したトニー・ブザン氏が設立した世界記憶競技協会(World Memory Sports Council)が、世界各地でオープン大会を開催しているとのことでした。
海外の大会のことなど全く頭になかった私ですが、せっかく記憶力日本一になったのですから、記念受験というわけではないですが、一度どんなものか出てみようと思い、日本選手権から半年後の2013年8月にオーストラリアのメルボルンで開催されるオーストラリアオープンに参加することを決めました。
国際大会は種目数が日本の大会の倍の10種目だったり、大会の進行は英語だったりとかなり大変だったのですが、結果、なんとその大会でも優勝することができたのです。
こうしていつの間にか記憶競技の世界の住人になってしまった私は、次なる目標を探し、そしてそれを見つけたのです。
それが日本人初の記憶力のグランドマスターの称号を得るというものでした。
■ グランドマスターの壮絶な条件
この記憶力のグランドマスターとは何かと言いますと、年に一度、12月に開催される世界記憶力選手権に出場し、その中の種目で次の3つの条件をクリアした者に与えられる称号です。
その条件とは、
1、 ばらばらに切った1組のトランプの順番を2分以内に記憶できること。
2、 ばらばらに切ったトランプの順番を1時間で10組以上記憶できること。
3、 ランダムに並んだ数字を1時間で1000桁以上記憶できること。
2013年12月イギリスのロンドンで開催された世界記憶力選手権に出場した私は、そこでついに念願の記憶力のグランドマスターを手にすることができたのです。
カンガルーの顔と名前だって覚えられる
記憶の世界で少しずつ知られるようになった私はテレビ出演のお話をいただくようになりました。
“記憶力の人”として呼ばれていますので、出演時には記憶のパフォーマンスがほぼセットになっています。よくあるパターンとして、人の顔と名前を覚える、買い物リストを記憶してメモなしで買い物する、そしてバラバラに切ったトランプの順番を覚える、などがあるのですが、その中で、いくら何でもそりゃ無茶だろうという企画がありました。それが柵の中に集められたカンガルー30頭を、それぞれにつけられている名前(「さくら」とか「ダンゴ」とか)を一度聞いただけで記憶するというものでした。撮影に至るまでいろいろあったのですが、自分を超集中モード、強制フロー状態に追い込み、結果的にそれもなんとか成功することができました。
いくつからでも記憶力を諦めない
以前は脳というものは7歳ぐらいを過ぎると徐々に柔軟性を失って変化しなくなると思われていました。しかし現在では脳科学の発達によって脳には可塑性(必要に応じて変化できる性質)があり、いくつからでも神経細胞を増やすことができ、神経回路が発達することがわかってきています。
例えば、ロンドンの街中を走っているブラックキャブと呼ばれるタクシーがあるのをご存じでしょうか。ロンドンの道はとても複雑で入り組んでおり、この職業をこなすためには膨大な情報を記憶しなければならないのですが、運転手を続けていくうちに彼らの脳が変化していくというのです。脳のなかで記憶を司っている部位の「海馬」の神経細胞が増大し、海馬全体が大きくなることがロンドン大学の研究からわかっています。タクシーの運転手なので、もちろん大人になってからの脳の変化です。
■ これからも記憶力は重要な能力です
それと手前味噌ながら、私自身がいくつからでも記憶の能力が伸びる証明になっていると思います。
というのは、私が記憶競技をスタートしたのは先にお伝えした通り40代の半ばです。そこから約2年間、いろいろな記憶競技の大会に参加していますが、その記録がだんだん伸びてきているのです。
冒頭に紹介した1450の数字記憶の記録は、最近、中国で開催された世界選手権での記録で、グランドマスターを獲得した2013年のロンドン大会の記録より大幅に伸びています。
このように刺激を与え続ければ脳はいつからでも成長できるのです。そして、その脳を使う記憶力ももちろん諦めなくていいのです。
私自身も脳に刺激を与え続けていくつもりです。今の夢のひとつは60歳で世界記憶力選手権に出場し、シニアの部で世界一になることですから。
これからも記憶力は重要な能力です
今やテクノロジーの発達により便利な世の中になりました。重要な情報は全て機械に記憶させ、欲しい情報はいつでもインターネットから取り出すことができるようになりました。これからもテクノロジーはますます発展していくことでしょう。それは素晴らしいことです。しかし、一方テクノロジーに頼りすぎて人間が本来持つ能力が退化しては良いわけがありません。
なぜなら今までも、そしてこれからも人間を判断する材料は「学力」「学歴」「資格」「免許」など、試験で得られる結果で判断されることに変わりがないからです。
そうはっきり言えるのは、試験が得点だけを見るものではないからです。合格までに費やした時間、教材、授業料などの「経済力」、継続して勉強を続けてこられた「意志力」、その他「集中力」等々、試験とは得点だけでなく、このようにその人が持っている総合的な人間力を判断できる方法だからです。
今後もきっと、人の判断基準として試験という形態は続いていくでしょう。
そしてその試験をクリアするための重要な能力が記憶力なのではないでしょうか。
記憶力とは「想像力」です
今回を含めて今後7回に渡って仕事や生活のなかで役に立つ記憶のテクニックをご紹介していきます。
記憶力と言っているものの、連載をお読みいただくとおわかりになると思いますが、実は記憶の技術にとって最も必要なのはイマジネーションの力、つまり「想像力」です。大人になるとどうしても常識の枠にとらわれがちになりますが、記憶力を向上させるために必要なのは子どものように純粋で型にはまらない想像力なのです。
皆様も大いに想像力の羽を広げて記憶のテクニックを習得していただければ私としても嬉しいかぎりです。