無垢毒１

（「宇宙の理」2018年９月号より）

昼下がりのコーヒーブレイク

無功徳

現代では「ギブ＆テイク」が常識です。
しかし昔から、それは間違いだという教えがあったのです。

ＧＩＶＥ＆ＧＩＶＥ

　昔はほとんど聞かれなかった「ギブ＆ギブ」という言葉を使う人を、最近は時々見かけるようになりました。
　昔と違って精神世界に興味を持ち、宇宙の法則について考え、感じる人が増えてきたようです。

　しかし現実は「おはよう」と挨拶（ギブ）して、何の反応も無く無視されて受け取るもの（テイク）がなかったら腹が立ちます。
　笑顔で挨拶されたら笑顔で返すというのが一般的ですし、社会のルールとしての常識です。

　これが、禅という精神世界では少し違います。
「無功徳(むくどく)」という禅語があります。
　功徳とは行為に対する報酬を受ける権利で、無功徳とは功徳がないこと、見返りを求めないという心です。

　無功徳という言葉は６世紀前半に仏教に深く帰依(きえ)していた武帝が、お釈迦様より28代目の法孫の達磨(だるま)大師と中国・梁(りょう)国の武帝との問答の時の達磨の返答が由来しています。

　武帝は自ら仏典を著すほど仏教への造詣(ぞうけい)が深かったのですが、インドから大変偉い達磨大使という聖者が来たということを知り、直ちに達磨大使を宮中へ招いたときの問答です。

「朕(ちん)、即位以来、寺を造り、経を写し、僧を渡すこと挙げて記すべからず、何の功徳か有る」・・・

　つまり「私はこれまでに多くの仏塔(ぶっとう)を建立し、経文(きょうもん)を写し、多くの人を僧侶にしてきた。
　これら仏教のためになる行いを私がしてきたことに対し、どのような功徳があるだろうか？」と達磨に聞きました。

　達磨は「無功徳」と返しました。

　確かに、宇宙の法則では、善行は必ず見返り（神の恵み）があります。
　仏教でもそれが通説なのです。

　しかし動機が純粋であること（無条件）が条件です。それを期待したら見返りが消えると達磨は説くのです。

　御利益を期待するのはギブ＆テイクの心であり、テイクを条件としています。
　それを望んだ時点で善行ではなくなってしまうのです。

　人が喜ぶことをすることが大好きな人にとっては、そんな機会や環境をいただけたこと自体がご利益なのです。
　善行の結果、人が喜んでお礼を言ってくれる、そんな人の笑顔を見せていただくことで充分なのです。

　そんな人に宇宙学徒（宇宙の理の読者）はなりたいものです。

　仮に人に親切にしてやって何もお礼が返ってこなくても「それで良し」とする。
　そして逆に、人から親切にされたら、喜び一杯の心でお礼を言う。そんな心を持ちたいものです。

　前月の拙稿(せっこう)に続きますが、お礼を言われ、感謝されること自体が、善行をした人の存在価値を高め、心身を蝕む元である炎症を抑えるので、大変な功徳なのです。

　更に動機が正しければ、善行に対して別途、功徳が施されるのが宇宙の法則です。

　４月の「縁信力」

つづく

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